もしも
「こんど会った時はライバル同士よ。サミー。」
ミサは去っていった。そして、戦いは終わったはずだった。
「あっ。」
誰があげた悲鳴だろうか。
「ぎりぎりアウトって感じね。」
鷲羽のため息の後には・・・。
「サミー、気がついたかい。」
「あっ、魎ちゃん。」
「砂沙美ちゃん。計画がばれた。」
「えっ、砂沙美と津名魅さんが、密かに練っていた、ジュライヘルムと地球、征
服計画がばれたの。どうして、だれがばらしたの。」
「あれが。」
魎皇鬼の指さした方向には、宇宙生物がいる。
「またまた、面白い生物とリンクしたものだぜ。俺の中の意志が言っている。ジ
ュライヘルムと地球を征服しろと。」
なんか叫んでいる。
「どうしよう。魎ちゃん。このままじゃ、砂沙美、正義の魔法少女じゃなかった
事になるよ。」
「それに、砂沙美ちゃん。リンクされる時、他にどんな事を考えていたの。」
宇宙生物は、そこら中の美少年を捕まえては、キスをしている。
「砂沙美のせいじゃないよ。」
真っ赤になる砂沙美。
「津名魅様は、役に立つから、知らないふりをしておけだって。」
「それよりも、砂沙美ちゃん。隠ぺい工作が大切だよ。」
「そうね。魎ちゃん。」
「そこで、いい考えがあるんだ。」
「えっ。」
ひそひそと話し込む二人。
「ミサ・・・。」
「どうしたの。るー君。暗い顔して。」
「あの、宇宙生物、美紗緒ちゃんの隠された裏の心だって噂になっているよ。」
「どげひゃー。」
「どこから、そんな噂になるのよ。」
「だって、みんな、そう言ってるよ。」
「なっなんて、無知なピープルなのよ。」
あまりの事に立ちくらみするミサだった。
「美紗緒ちゃん。気にしたら駄目よ。」
「うん、でもね。」
小学校では宇宙生物の話題で持ち切りだった。
「天野があんな欲望、もっていたなんて、信じられない。」
「ふだん、おとなしいふりして、裏ではあんな事、考えていたのね。」
口々に言いたい事をいう同級生たち。
「そんな事、言ったら駄目だよ。美紗緒ちゃんだって、好きでそんな事、考えて
いたんじゃないんだから。」
みんなに注意する砂沙美。
「砂沙美ちゃん。ありがとう。でも、いいの。」
走っていく美紗緒。追いかける鳥さん。
「魎ちゃん、やり過ぎたんじゃない。」
「でも、砂沙美ちゃん、本来なら、君がああ、言われていたんだよ。」
「美紗緒ちゃんとの友情は、これぐらいでは壊れないわ。」
納得する砂沙美だった。
「サミー、よくも、ビックなジョーク、スピークしてくれたわね。」
「でたわね。ミサ。美紗緒ちゃんを返しなさいよ。」
「ミサ、だまされちゃいけない。そう言って、動揺させる作戦なんだ。」
「わかってるわよ。るー君。」
大きく深呼吸をしてから
「サミー、どうして、あなたにくっついた宇宙生物が、美紗緒ガールの意識にな
るのよ。」
「あの時、サミーは美紗緒ちゃんの事だけを考えていたの。だから、意識が美紗
緒ちゃんとつながったのよ。これは、ジュライヘルムの津名魅さまも、鷲羽先生
もそう言ってるから、間違いないわ。」
「そんなわけ、ないちゃわよ。」
「ミサ、興奮しすぎよ。」
「それに、どうして、そんなに美紗緒ちゃんの肩をもつの。ミサと美紗緒ちゃん
は、何の関係もないはずでしょう。」
サミーは冷めた目をして言う。
「ううっ。」
「どうしたのミサ。もしかして、美紗緒ちゃんがミサだったりして、なんて事は
ないわよね。」
サミーはさらにねちねちと言う。
「ミサ、相手が悪すぎる。ここはひとまず撤退だ。」
こうして、戦わずにサミーは勝利した。
「美紗緒ちゃん。砂沙美だけは、美紗緒ちゃんの事、信用してるからね。」
「ありがとう砂沙美ちゃん。」
砂沙美達は文句を言いに、鷲羽の所に行く。
「あの宇宙生物は、どうして、美紗緒ちゃんの深層意識なの。」
「天才だからわかるの。あれは、美紗緒ちゃんの深層意識よ。」
「鷲羽先生、ちょっと変じゃない。」
「気のせいよ。美紗緒ちゃん。」
「天才だからわかるの。あれは、美紗緒ちゃんの深層意識よ。」
「なんか、ロボットみたいだけど。」
「認めたくないのはわかるけど、人生って、どんな時でも、真っ正面から向かい
合わないと。逃げちゃ駄目よ。美紗緒ちゃん。」
がしっと両肩をつかむ砂沙美。
「ごめん。砂沙美ちゃん。わたし、たぶん。心の底ではそんな事、思っていたん
だ。」
「美紗緒ちゃん、君は潔癖でありすぎたんだ。だから、自分の弱い心を認めよう
としなかった。それが、こういう事になったんだ。だから、恥じる事はない。」
「だれ。」
「あっ、これ、魎ちゃん。気にしないで。」
砂沙美たちの励ましに関らず、どういうわけか、ますます、落ち込んでいく美
紗緒だった。
「サミーの野望を止められるのはミサ、君だけだ。」
「もういいわよ。お姉さまもやる気なくしたみたいだし。」
たそがれている二人。世界は宇宙生物とサミーの野望の前に風前の灯火となっ
ていた。
・
・
・
「ビンに入れるのに失敗してたら、なんて事になったかも知れないわよ。」
「そんな事、あるわけないじゃないか。姉さんじゃあるまいし。」
「どういう意味。」
「いや、べつに。」
たわいない姉弟の会話だった。
「でも、どうして、鷲羽先生は、間一髪セーフなんて言ったのかな。サミーって、
そんなに悪い事、考えていないと思うんだけどな。」
「そうね。」
裸魅亜は、しばらくの間、魔法スクリーンに写る、砂沙美たちを微笑んで見て
いた。すると、
「その時は、まだ、きていません。」
「え、何か言った。」
「ううん。」
気のせいね。津名魅の声みたいだったけど。
「留魅耶、その時ってどんな時だと思う。」
「姉さんの言葉なら、ジュライヘルムと地球を、姉さんが無理やり征服する時じ
ゃない。」
「留魅耶!!。」
どこまでも、平和な夏休みの午後だった。
戻る