うたげ
朝ご飯をすますと砂沙美ちゃんの家に出かけた。でも、砂沙美ちゃんはいなかった。
今日、一日何をしてようかな。こんな事なら塾があった方がよかったな。でも、一
人でいる事には慣れているし。あっ、鳥さん。
「ミサ、迎えに来たよ。」
あれっ、鳥さんってしゃべれたのかな。それにミサって誰。
「にょほほほ。あやうく忘れる所だったわね。レッツラゴーよ。」
私、急に何を言っているの。
「よく来たわね。ミサ、今日は無礼講よ。」
「お姉さま、いつもそうじゃない。」
「まあ、そうよね。」
誰、この人。でも見覚えがある。でも思い出せない。
その後、お酒なんか飲んだりしてどんちゃん騒ぎをした。楽しかった。
「なんか足りないわね。そうだ。留魅耶、お酒の追加とおつまみの追加よ。」
「お姉さま。グッドアイデアね。るー君。」
「何言ってるんだよ。姉さん飲み過ぎだよ。それにミサは未成年だろう。いや、そん
なことは関係ないよね。うん、買ってくるよ。」
私の顔を見て鳥さんがおびえている。どうしてだろう。まあ、いっか。今は楽しんだし。
しばらくお姉さまとぐたぐたと喋っていた。
「ミサ、あたしはね。あのおポンチな津名魅が大好きなの。」
「お姉さま、あたしもあのお間抜けな砂沙美ちゅわーんが大好きなの。」
だいぶ酔っていた。
「津名魅はあたしを追いかけてたらいいのよ。なんで女王なんかになりたがるのよ。」
「砂沙美ちゅわーんはあたしのものなのに。あーん。」
あたしって泣き上戸だったみたい。
「姉さん達。」
あたしとお姉さまが抱きあって寝ているのをみて硬直している。かわいい。
「せめて、寝巻きに着替えてよ。」
「るー君ったら。そんなにあたしの着替えをルックしたいの。」
きゃーあたしすごい事を言っている。あれ鳥さん、真っ赤になって飛んでいっちゃった。
「そうね。ミサ、これあなたのパジャマ。私のはこっち。あのすけべが帰ってこないうちに着替えましょう。」
このパジャマよく似合っている。それに今日は何もかも忘れられるぐらい楽しかったな。
ふかふかのベッドは気持ちいいし。ああ、眠たい。
「留魅耶、ミサの所に行っちゃだめよ。」
「違うよ。姉さん、そんな事しないよ。あっ寝言か。おどろいたな。」
でも、どうしよう。こんなチャンスは二度とないぞ。いやいや、魎皇鬼みたいな外
道な事はできない。これでも、僕は紳士なんだから。でも、覗くぐらいならいいか。
そろりとミサの寝室に入って、ミサの寝顔を見る。やっぱりかわいい。パジャマ姿がセクシーだし。
「るー君。」
「えっ。ミサ、おきているのかい。いや、別に。見回りにきただけだよ。」
「お願い、しばらくここにいて。」
まるで美紗緒みたいに弱々しい。
「どうしたんだい。ミサらしくもない。」
「美紗緒が眠っているから言うけど。」
それだけ言うとミサは黙った。少しの沈黙の後、
「あたしは誰にも愛されていないのよ。そうよ。みんな、美紗緒がいいのよ。るー君もそうなんでしょう。」
吐き出すように言う。
「まだ、酔っているのかい。」
「はぐらかさないで、るー君。」
ミサは真剣だった。
「わかった。正直に言うよ。僕はミサが好きだ。」
告白してしまった。
「あーん。」
僕の言葉を聞くとミサは僕に抱きついて泣きだした。忘れていた。ミサだって10才の女の子なんだ。
泣き疲れて眠るまで僕はミサを黙って抱きしめていた。
次の日、何もなかったかのようにサミーをやっつける計画を立てていた。
「るー君。ツデェーこそサミーをギャフンと言わせるわよ。」
「やる気満々だね。」
「にょほっほほほほ。なーんか気分爽快って感じ。」
昨日の事は夢だったのだろうか。でも、そんなことはどうでもいい事だと思う。
どうであれ、僕はこの少女を守らなければならない。美紗緒がもう一人の自分であるミ
サを受け入れられるようになるその日まで。ミサの楽しそうな笑い声を聞きながらそう決心していた。
(終わり)
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